9月は菊月 (きくづき)と呼ばれ、 9月9日は重陽の節句、菊の節句です。今年は旧暦で「10月14日」です。今月は「キク」を取り上げます。一般に菊は愛でる(鑑賞する)モノが多いですが、ここでは、キクの頭花、すなわち菊花(きくか、きっか)という、薬用の菊をおもに紹介します。
キクは「聞く、効く、菊」とよく言われます。
「聞く」は、歌舞伎の衣装に用いられた柄、斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)を「良きこと聞く」と、洒落で使われます。
また、「菊は効く」などといわれ、昔から、不老長寿や健康保持などについて、さまざまな書物に著わされています。菊花の花、鑑賞用に比べ目立たず、作用(薬効)はあまり強くないですが、大変興味深い生薬(しょうやく)です。
菊花の種類と効用
薬用の「菊花」には、甘菊(杭菊花:コウキッカ)と苦菊(野菊花:ノギクカ、島寒菊:シマカンギク)の2種類があります。
甘菊(杭菊花)
苦菊(シマカンギク)
私が初めて「菊花」に出会ったのは、1991年、香港の薬問屋です。オヤジさんがデッカイコップに花を浮かべて飲んでいました。この花は何かと聞くと「菊花」だと。その理由は「昨夜深酒をし、今夜も日本からの偉い人と飲むので、昼までに酒毒を消すためだ」とのこと。
日本に戻り「菊花(杭菊花)」を調べると、薬用で、「性質:涼」、「味:甘・苦」と。効果は、「抗菌、毛細血管の抵抗力増強、清肝明目の作用」とありました。
<甘菊>
「甘菊」の杭菊花は、茶菊として、夏に北京などで飲まれています。美味しいですよ!! 杭菊花に含まれる成分に、抗アレルギー作用があり、花粉症やPM2.5による眼の痒み、涙目、鼻水の改善に有効です。そこで、菊花を含むハーブティー「ハチャメチャ菊茶」を作って販売してみました。花粉症を軽減し、リピーターもたくさんおられたのですが、ほとんど利益が無く、年金生活になったので製造を止めています。残念!でも、リクエストがたくさんあれば復活させますよ(苦笑)
<苦菊>
熊本では、南阿蘇、天草などにシマカンギクが自生しています。花を噛むと大変苦いので「苦菊」と言われ、煎じて飲みますが、苦過ぎて飲みにくいですね。
「苦菊」には、清熱解毒の作用があります。「風邪を除き、清熱、目を明らかにし、充血を除く」ので、「頭痛、めまい、眼の充血、胸部のモヤモヤの改善を目的」に、漢方薬の枸菊地黄丸(こぎくじおうがん)、釣藤散 (ちょうとうさん)に配合されます。
食用として
シマサイコはこんな植物
東北地方では、「もってのほか」「阿房宮:あぼうきゅう」等と呼ばれる食用菊の花びらを食します。最近は、東京等のスーパーでもよく見かけます。
食用菊は、酒毒を消すので、特に酒のつまみで食されます。シャキシャキした花びらは苦みが少なく、独特の芳香と甘味が味わえ、二日酔いの防止にもなります。
パスポート、二条城の瓦
食用菊の「もってのほか」の名前の由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとは“もってのほか”だ」からきているとか。また、「阿房宮」は、菊を愛でた秦の始皇帝の宮殿の名前からだそうです。(どちらも諸説あります。)
キクは種類や色がたくさんありますが、キク全般の花言葉は、「高貴」「高潔」「高尚」。気高く気品に満ちたキクの花姿にちなむといわれます。
もってのほか、 阿房宮
刺身の小菊、菊の花弁の製品(直径30cm位)
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