8月に入り、茂みに行くと蔓(ツル)が巻いています。手のひらより大きい3枚複葉のクズ(葛)です。クズは、マメ科クズ属のつる性の多年草で、濃い紫色の花を、熊本では8月中旬から9月初旬にかけてつける、秋の七草の一つです。因みに、秋の七草は、萩、薄、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗(ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ)の7つです。
クズは、大和国(現奈良県)の国栖(クズ)という地名に由来するそうです。
クズの花
クズの部位別利用法①
ミシマサイコはこんな植物
●クズの根:
根は葛デンプン(葛粉※)を作るのに用います。
根の澱粉を奇麗な湧き水で50回以上さらし、輝く宝石のような澱粉ができあがります。美味い!!ただ、デンプンには味がありませんが・・・。
暑くなるとクズ餅、クズ切りなど、葛粉を使った涼しげであっさりした食べ物が美味しく感じますね。
※市販のクズ粉は、クズデンプンではなく、さつまいもデンプンが用いられています。購入の時、袋の裏の原材料を確認して下さい。面白いです。
葛デンプンを作る時に廃棄する部分(水に溶ける成分)を薬用に用います。廃棄される部分が薬用になるなんてエコな植物ですね!! 葛の根を乾燥したものをカッコン(葛根)といい、“風邪に葛根湯”として知られていますね。クズの肥大根を乾燥して、漢方薬の葛根湯によく用いられています。クズの根はイノシシの大好物で、太さが人間の太股以上のものもあります。
クズの肥大根
“ 知っておきたい葛根湯 ”
●葛根湯の処方
7種の生薬が処方されています。
①葛根(カッコン)、②大棗(タイソウ:ナツメ)、③麻黄(マオウ)、④甘草(カンゾウ)、⑤桂皮(ケイヒ:シナモン)、⑥芍薬(シャクヤク)、⑦生姜(ショウキョウ:ショウガ)。
麻黄、芍薬以外の5種は食用にも用いられる薬用植物です。
●主な効用
◆ひき始めの風邪※に(飲み方)
体力のある方(寝たきりや動くのがきつい方は避ける)は、風邪かなと感じたら直ぐ(頓服で)、服用。可能なら一緒に重湯(おもゆ)やショウガ湯を飲むと、さらに良い効果があります。背中を温め、2時間おきに飲み(1日3回では効果が出ません)、ほんの少し汗が出たら、飲むのを止め、身体を冷やさないようにして養生してください。
※葛根湯は、特に、背中を冷す、冬の寒邪(かんじゃ)に冒され引く風邪(かぜ):風邪(ふうじゃ)による感冒に用います。
◆その他の効用
肩凝り(首筋がこる肩凝り)、母乳を出す、乳腺炎、食中毒、腰痛などに。
◆葛根湯の副作用
麻黄が入っていますので、胃の悪い方は胃が重たくなることがあります。授乳時に飲むと、乳児が興奮し、眠らないことがあります。身体の弱った方が飲むと、汗が止まらないことがあります。飲んで具合が悪くなったら、直ぐに飲むのを止めて下さい。これは誤使用です。
クズの部位別利用法②
●クズの蔓(ツル):
秋には蔓でカゴを作ったり、クリスマスにはリ-スを作るのも楽しみです。昔は蔓の繊維で葛布を作り着物などにしたりもしました。
●クズの新芽:
アクを除いて食用に。
●クズの花蕾(カライ):
採取し、乾燥して保存。虫が多いのでよく除いてください{虫も煮ればタンパク質&脂質等の栄養素がありますよ(苦笑い)}。花蕾のお茶は肝機能を改善します。お酒を飲み過ぎた時・二日酔い防止にも。葛花(カッカ)を煎じたモノは、酒毒を消す作用が強く、お酒の飲み過ぎに効果があります。お酒に弱い人は、飲む前にお試し下さい。
ただし、葛花茶は、お酒に強い人が飲む前に飲むと、酔えなくなることがあり、酔うまで飲むので懐が淋しくなりますよ。葛花茶はお酒を飲んだ後にご利用下さい。(笑)
クズの花が咲く季節は、足元のマムシが元気な時期です。クズの花の採取時は、よく注意してください。もしマムシに噛まれたら、2時間以内に血清を注射しなくてはなりません。緊急連絡は日赤などに。
それから、マムシはイノシシの大好物。イノシシが多いと、マムシは少ないようです。イノシシに追われ、マムシが溝など少し深いところに逃げ込んでいますので、溝などに落っこちないようにご注意を!!
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